deli.は、デザイン・コレクションを活用した美術館教育プログラム、オリジナル教材の開発を目的に、平成16年度に行ったプロジェクトです。全ての人々に対して開かれた新しいデザイン教育を模索するこのプロジェクトは、ただデザインの知識を伝えるのではなく、制作と受容、生産と消費、研究とプロデュースに対する興味や認識を目覚めさせ、それを実現するために近・現代のデザインとライフスタイルを体験的に学ぶことを目指しました。
ここでは、コレクションから厳選した28点のデザイン作品によるカード式パンフレット[ワークシート&テキスト編]、これらを素材とした8種の教材[キット編]を紹介します。
このパンフレットでは、奇数ページ[カード表面]に素材とした作品に関する詳しいデータ、偶数ページ[同裏面]に短いワーク[課題]とテキスト[解説]を掲載しました。ワーク&テキストは、知識を問うQ&A[問題集]ではなく、一人[独習]、二人[対話]、複数[グループ学習]、不特定多数[コミュニケーション]の手がかりとなるものです。文章表現のレベルは、ワークを小学校4年生以上、テキストは中学生以上をひとつの目安としています。しかし、仮に年少者であっても、指導法、使う場面や状況さえ工夫すれば、十分な理解を得ることができ、専門家にとっても、デザイン基礎教育に触れる充実した内容になっています。
人のすがたをキャンヴァスと考え、その上に単純な色と形で描いた抽象画。遠い外国の民族衣装を思わせるモダン・ダンスの舞台衣装。スカートや髪を短くしたモダン・ガールの生き方。薬品のような香りの化粧品。モダニズム(近代主義)に対する違和感。かかとの高いブーツとジーンズ。人形の服を着せ替えながら、ファッションが映す時代や流行の変遷を学びます。
簡素で使いやすい木工椅子 ― 部材の数、大きさ、かたちをくらべて見ましょう。部材と部材はどのようにつながっているのでしょうか。丈夫で値段の安い金属パイプ椅子 ― 部材をばらばらにすると、椅子はいったいどうなるのでしょうか。縮尺2分の1の模型を組み立てたり分解することで、モダン・インテリアの優れた造形性、人間工学、生産技術を学びます。
いつでも、どこでも、だれでも使いやすいこと。衛生的で割れにくいこと。長く使ってもあきないこと。そして、料理をおいしく味わえること。オリジナルを忠実に復刻したリプロダクション製品、私たちになじみ深い学校給食の食器セットをくらべながら、食生活や文化の違い、時代を超えるグッド・デザイン(良いデザイン)とは何かを学びます。
うす切りの焼いたパンを台所から食卓へ運ぶ器具。試験管を立てたり乾かす器具。化学者がデザインしたコーヒー・メーカー。台所用品そっくりの漏斗[ろうと]とフラスコ。素材、かたち、使い勝手に共通性があり、本来の使用目的を逆にすることもできるデザイン作品と理科の実験器具をくらべながら、プロダクト・デザイン(工業デザイン)の成り立ちを学びます。
人はなぜカメラを発明したのでしょうか。仕組はどうなっているのでしょうか。かたちと仕組はどんな関係があるのでしょうか。本物の古いカメラ、それにヒントを得て制作したオリジナルの大きなカメラ・オブスキュラ(内側が黒い箱にレンズをはめ、レンズと向かい合う内側の白い面に外側の景色を写す装置)を用いて、見ること・写すことに関わるテクノロジーと製品デザインを学びます。
地球(儀) ― 世界(地図) ― 日本(地図) ― 栃木県(地図) ― 宇都宮市(地図) ― うつのみや文化の森公園(縮尺400分の1の敷地模型) ― 宇都宮美術館(縮尺100分1の美術館模型) ― 展示室(縮尺25分の1の展示室模型) ― そして私たちと作品。マクロの世界からリアルな世界へ。三種類の縮尺による模型や工具を用いて、美術館とは何かを学びます。
ポスターとは何のために作られるのでしょうか。絵画や版画との違いは何でしょうか。そんな根本的な問いから始まって、石版、グラビア印刷、オフセット刷、シルクスクリーン、木版、活版に代表されるさまざまの印刷技法を、名作ポスターの美しいイメージ、分かりやすい技法解説、触ったり虫めがねで見ることができる「刷り見本」によって学びます。
宣伝される「もの」や「こと」をありのままに大きく描いた即物的ポスター。わざと昔風の書体を使ったり、逆に写真の合成によって斬新なイメージを打ち出した政治的ポスター。ユーモラスなイラストレーション。クールな写真表現。グラフィック・デザインに関するさまざまのアイデアや方法を、ワークシートとパロディ作品で学びます。